商法 令和5年予備試験 再現答案 結果C

第1 設問1

1 乙社は①乙社が提案したFを取締役に選任する旨の議案を記載せずに株主総会を招集したことと、②Aの本件総会への出席を拒絶したことが「招集の手続き」が「法令」に違反するとして本件決議の取消訴訟を提起する(会社法(以下略)303条,831条1項1号)。

2 ①について

⑴ 乙社は総会決議の「六箇月」以上前の令和4年6月ごろから、「株主総会の議決権の百分の一」以上の10%にあたる1000株を有していた。また、株主総会決議の「八週間」以上前の令和5年4月10日に、Fを取締役に選任する旨の議案を提出しているため、乙社は適法に株主提案権を行使しており、甲社はこれに応じる必要があった(303条1項)。しかし、甲社はFを取締役に選任する旨の議案を記載せずに株主総会を招集したため、304条に違反している。

⑵ 以上より、①の主張は認められ、本件決議は取り消される。

⑶ なお、Fを取締役に選任する旨の議案が記載されていても何ら決議結果が変わらなかったといえる特段の事由もなく裁量棄却はされない(831条2項)。

3 ②について

⑴ 甲社定款の「株主総会における議決権行使の代理人の資格を甲社の株主に限る旨の定め」が105条1項3号の株主の議決権を侵害し違法無効であるかがまず問題となる。

ア 株式会社は、強行法規に反しない限り、定款を定めることができる(466条)ところ、株主の議決権は法令で認められており、制限することはできないのが原則である。もっとも、会社の便宜のため必要性がある場合、株主権を不当に制限しないものであれば許容されると解する。

イ 本件定款の趣旨は、株主総会がかく乱されることを防止するためであり、必要性が認められる。また、代理権行使を株主である者に対しては認めているため不当に制限しているわけではなく、定款は有効である。

⑵ もっとも、定款が有効であっても、定款の行使により、実質的に株主の権利行使を奪う場合公序(民法90条)違反であり、その行使自体が違法になると解する。

ア 乙社は法人であり、自ら議決権を行使することはできず、代理行使をする必要がある。乙社の社員の代理行使を認めない場合、乙社は実質的に株主の権利行使ができない。また、甲社はAが乙社の社員であることを知っていたのであるから、甲社が定款を行使してAの出席を認めなかったのは公序違反で違法である。

⑶ 以上より、Aの本件総会への出席を拒絶したことが「招集の手続き」が「法令」に違反するといえ、②の主張も認められる。

第2 設問2

1 Dは、828条1項2号に基づき、株式の発行の無効の訴えを提起する。無効の訴えにおける無効事由は明文がなく問題となる。この点について、株式発行は、多数の利害関係人が存在し、法的安定性の要請が強く、無効事由は重大な違法に限ると解する。

2 Dは、①本件発行が、「特に有利な金額」での発行であるにも関わらず特別決議をしていない点②本件発行が「不正正な発行」にあたるにも関わらず株主が差し止めをする機会もなかった点が重大な自由であり本件発行は無効となると主張する(199条3項、309条2項、210条3項)。(なお、丙社は甲社株式の40%である6000株を有するに至るにすぎないため、206条の2は適用されない。)

3 ①について

⑴ 「特に有利な金額」とは、資金調達目的を達成できる範囲で株主にとって最も有利な金額をいう。そして、資金調達のためには一定の割引をすることはやむを得ないため、10%程度までの割引については許容されると解する。

⑵ 本件では、公正な払い込み価格が1株20万円なところ、50%もの割引を行い1株当たり10万円で発行している。50%もの割引を根拠づける特段の事情もないため、特に有利な金額による発行である。

⑶ 特に有利な金額にあたる場合、特別決議を行う必要がある(199条3項、309条2)。特別決議が要請される趣旨は、特に重大な事項に関して慎重な決議を行う点にある。しかし、甲社は普通決議を含めて一切の総会決議を行っておらず、これは重大な違法である。

⑷ よって、①の主張は認められる。

4②について

⑴ 株式発行は資金調達を目的とすることが基本である。そして、株主から委任を受けた取締役が支配権維持を目的とするのは不当であり、支配権維持を目的とする場合「不正正な発行」にあたると解する(210条3項)。そして、資金需要がない場合における株式発行は、不公正な目的でないといえる特段の理由がない限り不公正な発行にあたると解する。

⑵ 本件では、甲社に特段の資金需要はなかった。また、Aは「乙社が持株比率を増やし続けるのを放置するわけにはいかない」と、支配権を維持する目的を有し、B及びCもこれに賛成している。さらに、株主総会で乙社が甲社に対する支配力を拡大することが、甲社にとって有害であるか否かについて株主総会により総意を確認することもしていないのであるから、不公正な目的でないといえる特段の理由もない。

⑶ 以上より本件発行は、「不正正な発行」にあたる(210条3項)。

⑷ また、甲社は株主に対する通知及び公告も行わず、株主が差し止めを行う機会すら与えておらず、無効確認訴訟以外で株主が救済されえない。このような場合、株主救済のために不公正な発行にあたることが重大な違法事由となると解される。

⑸ 以上より、②の主張は認められる。         以上

 

民訴⇒商法⇒民法と解いた。いつもそうしてる。

80分くらいかかった。早く終わらせないとと終盤かなり焦る。

設問1 

310条か!みつけれなくて103条にしてしまった。書き方もきちんと覚えておらず公序をつかった。あてはめ部分でかく乱される恐れがないことについて書いてない。

決議の方法ではなく、招集手続きにしてしまっている。。

設問2 

309条2項何号かわからず

けっこうぼろぼろだ。特別決議違反では無効にならなさそうな気がしたが、時間ないし簡単に無効にして次に行った。

差止できない場合は無効の結論は知っていたが、その過程の論証をよく知らず微妙な答案に。これはきつい!

206条の2を一言触れたのに点数入ってほしい。