労働法 令和5年予備試験 再現答案 結果E

第1 設問1

1 A社がBに対して海外研修費用の返還を請求することが労働基準法(以下「労基法」とする。)16条の「労働契約の不履行について・・損害賠償を予定する契約」として無効とならないか。

2 労基法16条の趣旨は、使用者がその優越的立場から、損害賠償を予定する契約を労働者と結び、労働者の退職や職業選択の自由を奪うことを禁止する点にある。そうすると、①労働者が自由意思に基づき応募する形式で、②労働者のキャリア形成や能力向上に資するものであり、③労働者が退職をした場合には会社が不足の損害を受け、④賠償予定額が労働者にとって酷とはいえない相当なものである場合には、損害賠償を予定した契約も例外的に無効とならないと解する。

3 Bは、海外研修制度に自らの意思で応募している(①充足)。海外研修制度でBはC国大学の大学院へ留学し、学業に専念できているのだから、自身のキャリア形成や能力向上に資するものである(②充足)。海外研修費用は全てA社が負担しているうえ、A社はBに対して海外研修中2か月に1回程度短時間のオンライン研修を受けさせるほかは何ら業務に従事させていない。それにもかかわらず、A社はBに対して職務に従事する場合と同額の基本給と賞与をBに支給していた。A社がこのような負担をしていたのは、社内に国際的な人材を育成するための投資としての一面があり、対象者も入社5年目までの若手としていたことから、海外研修制度終了後末永く貢献してくれることを期待しているからである。そうだとすると、労働者が帰国後短期間で退職した場合にはA社にとって不足の損害が生じるといえる(③充足)。また、Bは帰国後60か月以内に自己都合でA車を退職する場合海外研修費用の全部または一部を返還することについて説明され納得して製薬所も提出しているにもかかわらず、わずか6か月で自己都合退職をしているのであるから、返還額が一部であり不相当で課題でない場合には返還を請求されても酷とは言えない(④充足)。

4 以上より、A社はBに対して相当といえる範囲において海外研修費用の返還を請求できる。

第2 設問2

1 FはG社に対してG社は安全配慮義務の内容として環境整備義務を負い、その環境整備義務に違反した基づく不法行為責任として慰謝料及び、退職による逸失賃金相当額の請求をする(請求①)(民法709条)。

2 FはG社に対して、FからDの不法行為について相談を受けたのに対応しなかったことが安全配慮義務違反であり、その違反によりFは退職をしたとして、不法行為責任として慰謝料及び、退職による逸失賃金相当額の請求をする(請求②)(民法709条)。

3 FはA社に対して、A社は子会社の社員および子会社の環境整備に対して使用者責任類似の義務があり、民法715条を類推して慰謝料及び、退職による逸失賃金相当額の請求をする(請求③)(民法709条)。

4 請求①について

 G社は、コンプライアンス違反行為を予防するための相談窓口を設置し、その窓口の設置も社員に周知していた。このような実態からするとG社の環境整備義務は形式的には守られていたといえる。そして、DはG社の社員でない以上教育等はできなかったのであるから、環境整備義務違反はないといえる。よって請求①は認められない。

5 請求②について

 Dの行為は不法行為であり、G社は自社社員であるFの相談に対し、安全上の配慮をする義務があった。それにも関わらずなんら配置転換の検討や調査を行わなかったのであるからG社には安全配慮義務違反が認められる。その結果Fは退職をしており、G社の違反と因果関係も認められる。よって、請求②は認められる。

6 請求③について

 A社は子会社社員であるDの不法行為につき、民法715条を類推して責任を負う余地がある。また、G社の安全配慮義務違反についても、民法715条を類推して責任を負う余地がある。よって、請求③は認められうる。

7 その他の請求として、FはA社に対して、A社がFの相談に応じなかった点が安全配慮義務違反だとして請求をする可能性があるが、この点については事後的な相談であり、Fが退職に至ったこととなんら関連性がなく認められない。        以上

 

難しい。よくわかりません。 設問1はうろ覚え。設問②は大学院のレポートで一度やったことがあり、それを思い出しながらなんとか書いた。もしかしたら少しは点数があるかもしれません。